波の行く末
起きる時間をミスった。仕方なく満員電車に乗る。降りる駅は右側だからギリギリまで右のドアに寄っておく、というより押されてる________。
身長130センチくらいの制服を着た、いかにも活発そうな男の子がドアを背にして舟を漕いでいた。
こんな朝早くの電車に乗っているのだから、お母さんにきっと叩き起こされながら毎朝起きているのだろうか。
少しづつ、波は大きく揺れるようになって、立ったまま寝ている彼の船はびっくりするぐらい前後左右へと揺れていくようになった。
男の子の前にいた背の高いお兄さんに思いっきり衝突事故を何度も起こしている。
陸から眺めている私には微笑ましいが、周りの船はどう思っているのだろうか…。
次は私の降りる駅。そして、寝ている彼がもたれているのは右のドア。このまま開いたら…そんなことを考えてヒヤリとする。
そっと優しい声がかかる。彼の前に立っているお兄さんだ。
また優しい声がかかる。横にいたおじさんだ。
いつも無機質な車内が今日は違う。
なんだか周りが笑っている気がする。
夢の波から帰ってきた彼は
なんとか頷きながら
私と同じ駅で出港していった。